VNE事業者とは?IPv6を使う意義やメリットも解説
2025年02月21日 更新日:2025年02月21日
「VNE」や「VNE事業者」という言葉を聞いたことはあっても、どのような意味なのか理解していない方もいるでしょう。また、IPv6を調べているうちにVNEという言葉を知って気になった方もいるのではないでしょうか。
本記事では、VNEやVNE事業者の基礎知識から現在の主要VNE事業者、IPoE接続契約総数、IPv6を使う意義やメリットまで解説します。
VNE(VNE事業者)の基礎知識
初めにVNE(VNE事業者)の基本的な知識から、主要なVNE事業者、IPoE接続契約総数まで解説します。
VNE(VNE事業者)とは?
VNE(Virtual Network Enabler)とは、バーチャル・ネットワーク・イネイブラーの略で、直訳すると仮想通信提供者です。VNEは、プロバイダにIPv6ネットワークを提供する事業者のことを指します。簡単に言えば、VNEはインターネットを快適な通信速度で利用可能にするサービスのことです。
VNE事業者は、プロバイダに対してIPv6ネットワークを提供しているため、エンドユーザーが直接的に関わることはほとんどありません。一般的にはプロバイダが持っているネットワークに加えてIPv6もエンドユーザーに提供したいときに、VNE事業者に依頼します。
プロバイダは1990年代から従来のネットワークであるIPv4を構築・活用してきました。しかし、インターネットの普及によりIPv4ではIPアドレスの在庫が枯渇してしまうことが予想され、新たな規格であるIPv6が誕生しました。
IPv6が注目を集めてはいるものの、まだ世界にはIPv4しかアクセスできないサービスが多く存在するため、IPv6と併用して通信を提供する必要があります。そこで、IPv4を提供しながらIPv6を構築するのはコストがかかることから、NTTのNGN網(次世代ネットワーク)限定でIPv6をスムーズに提供できるVNE事業者の需要が高まりました。
VNE事業者は、NTTのNGN網に限定し、他のプロバイダに対してエンドユーザーへのIPv6ネットワークの接続機能を提供しています。つまり、NTTのNGN網以外では、VNE事業者は関与しないという点を理解しておきましょう。
VNE事業者の需要が高まった背景には、2015年にNTTが光回線の卸売を行う「光コラボ」の提供を開始したことも挙げられます。モバイル回線の切り替えや、自宅の通信サービスの切り替えが促進されるようになり、ISPやISPに回線を卸すVNE事業者の需要が拡大しました。
また、IPoEベースのIPv6ではVNEがトラフィックを予想して帯域を増設するため、混み合わずストレスなくインターネットを利用できることも、VNE事業者の需要が高まった要因です。
VNE事業者の主な役割
VNE事業者は、NTTのNGN網限定でIPv6に特化した高速かつ安定的なインターネット接続を提供するポジションとして、重要な役割を担っています。ここではVNE事業者の主な役割について解説します。
ネットワーク設備を提供
VNE事業者はNTTのNGN網を利用するプロバイダに向けてネットワーク設備を提供し、エンドユーザーの快適なインターネット接続を実現しています。主に「IPv6 IPoE」と「IPv4 over IPv6」のサービスが利用できるように提供するのが役割です。
NTTのNGN網を利用するプロバイダがIPv6の構築・管理・運用を行うには、多くのコストが発生します。しかし、VNE事業者を利用することにより、プロバイダはIPv6 IPoE接続方式のインターネット接続を、コストを抑えたスモールスタートで簡単に広く取り扱えるようになりました。
通信の効率化
VNE事業者はNTTのNGN網を利用するプロバイダにネットワーク接続を提供することで、エンドユーザーの通信を効率化する役割を果たしています。
VNE事業者が提供しているIPv6を利用することで、従来の「IPv4 PPPoE」の通信でNTT網内のネットワーク終端装置(NTE)を必ず経由するために発生していた混雑による通信速度の低下を避けられます。NTTのNGN網に限っては、「IPv6 IPoE」「IPv4 over IPv6」の使用で、インターネット接続のパフォーマンスを向上し、エンドユーザーは快適な速度でストレスを軽減して通信を利用できるようになりました。
回線の卸売
NTT東日本とNTT西日本などから回線設備の卸提供を受けたVNE事業者には、他のプロバイダに回線を提供する役割もあります。卸売を行う際は、プロバイダの運営や保守面での負担を軽減できるような形態に変換して提供をしているのが特徴です。
主に「IPv6 IPoE」や「IPv4 over IPv6」のサービスを利用できるように提供しています。
主要VNE事業者は?
VNE事業者は、プロバイダの数と比べるとごくわずかしかありません。しかし、近年はプロバイダ自身がVNE事業者となり、エンドユーザーにサービスを提供するところも出てきているのが特徴です。
NTTのNGN網限定で、2011年7月からIPoE方式のIPv6インターネット接続を提供し始めるようになりました。当初のVNE事業者は「BBIX」、「インターネットマルチフィード(MF)」、「日本ネットワークイネイブラー(JPNE)※現:JPIX」の3事業者のみに限定されていましたが、NTT東西は2012年9月に新たなVNE事業者の申し込み受付を開始し、2014年3月以降16事業者に拡大しています。
主要なIPoE接続を行っている協定事業者の数は、9事業者です。また、接続方式は2023年1月1日時点で以下のようになっています(※)。
VNE事業者 | 接続方式 |
---|---|
BBIX | IPv6高速ハイブリッド |
インターネットマルチフィード | transix |
JPIX | V6プラス |
ビッグローブ | IPv6オプション |
朝日ネット | v6 コネクト |
NTTコミュニケーションズ | OCNバーチャルコネクト |
ファミリーネット・ジャパン | IPv6/IPoEサービス |
アルテリア・ネットワークス | XPASS(クロスパス) |
楽天モバイル | DS-Lite |
IPoE接続契約総数
IPoE接続契約数は、年々増加傾向にあります。
IPoE協議会のIPoE接続に関する統計情報によると、IPoE接続契約総数は2024年3月末で16,485,981回線となっており、2023年末の16,148,252回線を300,000回線以上も上回っているという報告があります(※)。
また、利用プロバイダ数も8つのVNE事業者の合計で254事業者となり、2023年3月末の229事業者よりも20以上も多いプロバイダに利用されている状態です。
VNE事業者とNTT東日本・NTT西日本との接続ポート数(100Gbpsポート)は、2024年3月末でNTT東日本が235、NTT西日本が207の合計442となっています。
※参考:一般社団法人 IPoE協議会.「IPoE接続に関する統計情報」
利用者から見たVNEごとの違い
各VNEで共通しているのは、快適な通信速度で利用できることです。しかし、インターネットや動画の閲覧速度などは、どのVNEでもあまり違いを感じられないでしょう。
ここからは、エンドユーザー目線でVNEごとの違いを解説します。自分の利用しているプロバイダがあれば、VNEと提携しているかどうかも確認してみるのもおすすめです。
ポート開放の可否
ポート開放とは、インターネット上のフィルタリング機能を解除して、外部からデータを送受信できる状態にすることを指します。
IPv4 over IPv6を利用してIPv4接続をする際に利用できるポートの有無はVNEによって異なるため、ポートの開放ができるかどうかをプロバイダへお問い合わせください。
オンラインゲームでサーバーを立てて通信プレイをしたり、外部と通信するプログラムを利用したりする人は、ポートの開放ができる接続方式を採用しているプロバイダを選ぶのがおすすめです。
VNEの変更をするには、プロバイダの変更が必要です。利用者がVNE自体を自由に選択できるというわけではないので注意しましょう。VNEを選択したい場合は、プロバイダの選択時に、どのVNEを採用しているのか事前に調べる必要があります。調べても分からない場合は、プロバイダへお問い合わせください。
利用可能なポート数
VNEによって、IPv4 over IPv6を利用したIPv4接続をする際に割り当てられるポート数も異なります。利用可能なポート数はいくつなのか、事前に確認しておくのがおすすめです。
利用できるポート数が多ければ、端末や利用者の数が増えてもスムーズな利用が可能になります。各端末や利用者がポートを消費することにより、ポート数が足りなくなってしまえば通信が途切れたり、読み込みに時間がかかったりすることも起こります。
専用ルータの有無
VNEによって、利用するための専用ルータの有無が異なります。ルータへかかる負担がどの程度なのかチェックしておくと良いでしょう。
VNEサービスごとの「IPv6 IPoE」「IPv4 over IPv6」対応ルータも確認しておきましょう。一般的に、IPv6に対応しているのは日本製のルータであることが多く、海外製は対応している割合が低いです。
自動判別に対応しているルータの場合、設定を特にしなくてもインターネットの利用が簡単にできるケースがあります。
IPv4 over IPv6を利用したIPv4接続の固定IPサービスの有無
IPv4 over IPv6を利用したIPv4接続の固定IPサービスの有無も確認しておく必要があります。VNEが固定IPサービスを提供している場合でも、提携先のプロバイダは提供していないというケースもあるため、VNE事業者とプロバイダのサービスをそれぞれ確認しておきましょう。
中にはVNEを途中で変更したり、サービスごとにVNEを使い分けたりしているところもあるため、事前にどのVNEを利用しているのか知っておくことが大切です。
IPv6を使う意義
従来のIPv4に加えて、IPv6を使う理由は何なのでしょうか。ここからは、各プロバイダがVNE事業者と提携してIPv6を導入する意義を見ていきます。
IPv6を利用する最大の意義は、IPv4のIPアドレス数枯渇に対応することだとされています。世界中で使用できるIPv4アドレスの数は43億個です。インターネットの普及でほとんど使用されているため、不足していると言われています。
また、日本で使用されるIPアドレスを管轄しているJPNICは、IPv4アドレスの新規発行を終了しており、新規では発行できません。
この枯渇状態に対応するために、IPv6は利用されています。IPv6アドレスは、約340澗(かん)個使用可能だとされています。340澗は340兆の1兆倍の1兆倍という数字であり、地球上の人類よりもはるかに多い数であるため、一人が複数のアドレスを使用しても、枯渇する状況はなかなか訪れないでしょう。
光回線事業者やプロバイダの負荷が減り、速度の高速化・安定化も期待できます。
IPv4 over IPv6とは
IPv4 over IPv6とは、従来のIPv4とIPv6の両方を利用できる通信規格です。IPv4パケットをIPv6パケットにカプセル化(内包)する仕組みによって、利用できるようになっています。
「IPoE(IP over Ethernet)」接続を使用するIPv6は、イーサネットを使用してIPパケットを送る仕組みになっています。IPoE方式の場合は、帯域幅の広い通信網や通信設備を活用してインターネット接続を行うため、混雑しにくいです。
IPv4 over IPv6を使用すれば、IPv4を使用しながら、IPv6の高速性や安定性を同時に利用できるため、便利だと言えるでしょう。
まとめ
VNE事業者は、エンドユーザーがより快適にインターネットを利用できるようサポートするために、NTTのNGN網限定で、IPv6 IPoEやIPv4 over IPv6などのネットワーク設備やシステムをプロバイダに提供しています。プロバイダはVNE事業者から提供を受けることで、IPv6ネットワークを低コストで広く取り扱えるため、導入されるようになっているのが特徴です。
IPoE接続契約総数は増加していますが、主要VNE事業者はごくわずかな傾向にあります。 IPv6を使う意義やメリットも理解して、プロバイダを選択してみてください。

2025年02月25日
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