PPPoEが遅い原因と速度改善方法は?PPPoEの限界と早くする方法について紹介

2022年08月25日 更新日:2024年02月27日

インターネット

目次

PPPoEが遅い原因は、ネットワーク終端装置の処理能力がトラフィックの増加に追い付いていないことです。この記事では、PPPoEが遅い原因と速度改善方法をわかりやすく解説します。

「PPPoEが遅い」と感じることはありませんか?トラフィックが増加するにつれ、以前から用いられてきた接続方法である「PPPoE」が限界に近づいています。

PPPoEに必要な「ネットワーク終端装置」の処理能力がトラフィックの増大に追い付いておらず、回線が混む時間帯に遅さを感じる原因となっているのです。

速度を改善するには、ルーターを接続し直すなど、混んでいる網終端装置を避ける方法がありますが、根本的な改善にはなりません。おすすめの方法は、網終端装置を経由しない次世代の接続方法である「IPoE」に切り替えることです。

この記事では、PPPoEが遅い原因や速度の改善方法を、初心者の方に向けてわかりやすく解説します。PPPoEについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

PPPoEが遅い原因

インターネットに接続しているデバイス数は増加傾向にあり、PPPoEでは対処しきれなくなっています。また、動画の視聴やネットゲームなど、より通信量の大きいインターネットの楽しみ方が広がっていることも、PPPoEを遅く感じる要因のひとつです。

網終端装置(NTE)の混雑

インターネット上でやり取りされる情報量(トラフィック)は、年々増加しています。接続されるデバイスが増えていることに加えて、動画など情報量が多いコンテンツがやり取りされるようになったことが関係しています。

下の図からわかるように、ユーザー1人当たりが利用するトラフィックも急増しています。これにより大きな負担を強いられることになったのが「ネットワーク終端装置」です。NTEとは、従来の接続方法である「PPPoE」でインターネットに接続する際、必ず通過する装置で、その処理能力が限界に近づいています。

多くのトラフィックを流すことができる光回線を使っていても、ユーザーが集中する時間帯になると網終端装置が情報を処理しきれなくなり、インターネットが遅くなることがあります。

時間帯によるインターネット速度の変化については、こちらの記事を参照してください。

網終端装置(NTE)の増設は困難だから

「ネットワーク終端装置が処理できるトラフィックに限界があるなら、NTEを増やせば良いのではないか?」と考える方もいるでしょう。

網終端装置はプロバイダごとにありますが、網終端装置を管理しているのはNTTであり、プロバイダが希望してもなかなか増設されません。また、大手のプロバイダと契約しても元の網終端装置は同じなので、速度や性能が改善されるわけではないのです。

PPPoEの速度改善方法

ここでは、PPPoEの速度を改善する方法を見ていきましょう。根本的にインターネットの速度を改善するには、網終端装置を経由しない次世代の接続方法である「IPoE」への切り替えが有効です。

PPPoEの再接続を繰り返す

1つめは、PPPoEの再接続を繰り返す方法です。これは、一戸建てなどの集合住宅以外で使える方法です。回線が速くなるまで、PPPoEの再接続を繰り返してください。

PPPoE接続が遅く感じる原因は網終端装置にありますが、プロバイダには複数の装置があり、どの装置を経由するかは接続する度に変わります。

混んでいる装置につながってしまうと回線が遅く感じられ、空いている装置につながると回線を速く感じるのです。混んでいない網終端装置につながるまで、PPPoEでの再接続を繰り返しましょう。この方法は俗に「PPPoEガチャ」と呼ばれています。

ルーターを再起動させる

PPPoEガチャを試すには、ルーターを再起動させてみてください。かかる時間は15分ほどで、具体的には、電源のON・OFFやケーブルの抜き差しを行います。

PPPoE接続で、どの網終端装置を経由するかは、ルーターが起動したタイミングで決まります。ガチャガチャの要領で、空いている装置につながったら「当たり」、混んでいる装置につながったら「外れ」です。

ただし、当たりの網終端装置につながったとしても、いつまでも「当たり」のままではありません。空いている装置もいずれ混んでくる可能性もあり、インターネットが遅いと感じるたびにガチャを繰り返すのは効率的とはいえません。PPPoEガチャは、あくまでもその場しのぎの対策といえます。

ルーターを再接続させる

「15分もかけてルーターを再起動させるのは効率的ではない」と感じる方には、ルーターを再接続させる方法がおすすめです。

パソコンなどからルーターを操作するのが一般的な方法で、高速でPPPoEガチャを行うことができます。方法はルーターによって異なるので、詳しくは取り扱い説明書を参照してください。

ただし、接続し直せばすぐに「当たり」の装置につながるとは限りません。数回挑戦してうまくいかないようならば、時間帯を変えたほうが良いでしょう。

また、利用しているプロバイダや地域によっては、最初から「当たり」の網終端装置が用意されていない場合もあるため、何度挑戦してもうまくいかない場合は、疑ってみる必要があります。

地域ケーブルTVのサービスを利用する

2つめは、混みにくいプロバイダを利用する方法です。

大手のプロバイダでも回線が速いわけではないということは、すでにお伝えした通りです。大手だからといって網終端装置の数が多いわけではなく、ユーザーが大勢いるぶん、かえって装置が混んでしまう可能性もあるのです。

そこで利用したいのが、混みにくいプロバイダや、地域ケーブルTVなどサービスエリアが限定されているプロバイダです。

この方法は、サービスエリア外では試せないのがデメリットです。また、マンションなどの集合住宅も設備の導入が難しいため、限られたケースでのみ使える方法といえるでしょう。

IPoEを用いた接続形式に置き換える

3つめは、次世代の接続方法である「IPoE」で接続する方法です。接続方法が根本的に変わるため、インターネット速度の向上が期待できます。

IPoEはPPPoEに替わる新しい通信方式

IPoEは、網終端装置を経由しない接続方法なので、PPPoEのような遅延が起こりにくいのが特徴です。ただし、単なるIPoE接続では、IPv6でのサービスしか利用できない点に注意が必要です。

現在、インターネット通信の主流となっているのは、従来型のIPv4・PPPoE接続です。次世代型のIPv6・IPoE接続に対応しているサービスは限られており、PPPoEとIPoEには互換性がありません。そのため、IPoE接続に切り替えてしまうと、従来型のIPv4を利用したサービスやWebサイトの閲覧ができなくなります。

IPoEに切り替える際には、従来のIPv4と最新のIPv6の両方に対応した「IPv4 over IPv6」が利用できるかどうかの確認が必要です。

IPv4 over IPv6について詳しく確認する

IPoEの特徴

PPPoEとIPoEの違いをまとめると、次のようになります。

PPPoE方式IPoE方式
IPプロトコルIPV4IPv6(IPv4 over IPv6を用いればIPv4に接続可能)
通信速度遅く不安定早く安定している

ここからは、IPoEの特徴を見ていきましょう。

安定した速度が出せる

IPoEは、従来のPPPoEで速度低下の原因となっていた網終端装置を経由しないため、回線の混雑が速度に影響しません。

設定が簡単

接続するたびにユーザー名やパスワードを入力する必要がなく、設定が簡単でスピーディです。

認証が不要

IPv6では「IPsec」と呼ばれる高度な暗号化技術が標準で使われており、認証が不要です。PPPoEに比べてセキュリティも強化されています。

対応したプロバイダとルーターが必要

IPoE接続を行うためには、光回線の利用が必須で、プロバイダもIPoE接続に対応していることが条件になります。また、専用のルーターも必要です。

IPv6のみに対応している

IPoEが対応しているのは、IPv6が用いられているサービスのみです。IPoE接続のみの場合、従来型のIPv4・PPPoEを利用しているサービスやWebサイトは利用できません。

IPv4でもIPoE相当のIPv4 over IPv6を利用できる

「IPv4 over IPv6」を利用すれば、IPoE接続であってもIPv4を利用したサービスやWebサイトの利用が可能です。IPoEについて、詳しくはこちらの記事を参照してください。

PPPoEが遅い理由を理解して速度改善をしよう

PPPoEが遅い理由は、網終端装置を経由して接続するという仕組みが、トラフィック量の増加に対応しきれていないからです。網終端装置が持つ処理能力の限界に達しつつあるといえるでしょう。

インターネットの速度を改善するには、空いている網終端装置を探すためにルーターのON・OFFを繰り返す方法や、サービスエリアが狭いプロバイダを利用するなどの方法があります。しかし、いずれもPPPoEを使用していることに変わりはありません。

根本的に速度を改善するには、網終端装置を利用しないIPoE接続に切り替える必要があります。IPoEへ移行する際は、従来通りのサービスも利用できるよう「IPv4 over IPv6」に対応していることを確認しましょう。